【!】吸血鬼パロです。
ゆるりと彼女の細い腕が俺の背中にまわされる。
視線は普段通りの冷ややかなものだったけれど、それでもやはりこの時だけはいつも強情な彼女も大人しく俺を抱
きしめる。その無表情とは対照的な彼女の可愛らしい動作を見るたびに俺はやはりこの女がどうしようもなく好き
なのだと再確認するのだ。
「今日も綺麗だな」
俺の肩に頬をうずめる彼女の髪を撫でながら素直に思ったことを口にすると、彼女はすこしだけ視線を逸らして、
うるさい、と小さくつぶやいた。この女はそんなところもまた可愛らしい。
「おい、」
少し強めの声が耳元で囁かれた。彼女の鋭い視線が俺を睨みつけるように突き刺さる。その瞳を覗き込めば、彼女
は苛立ち混じりに俺の首筋に手を伸ばした。彼女の冷たい指が頸動脈をなぞり、そのまま唇を近づける。そのひや
りとした感触に思わず口元がゆるんだ。
は、と生温かい呼吸と共に首筋に甘い痛みが走る。少々控え目に噛まれたそこから栓を切ったかのごとく波々と赤
い赤い血液がこぼれ落ちていく。彼女はそれを見つめて小さく舌舐めずりをして、それからまるで子猫のようにそ
れに舌を這わせた。少し飲んでは喉を鳴らすその姿はひどく官能的で思わず心臓が高鳴った。シックルは俺の首元
に張り付いたまま、時々口の端から飲みきれずに溢れる赤を億劫そうに乱暴に拭った。普段の彼女の高貴な振る舞
いからは考えも及ばないようなその行為がより俺の情欲をあおる。鼻孔を擽る甘い香りに眩暈がして、理性が脳内
で麻痺した。爪痕が残るほどに無我夢中で俺に縋りつく彼女の体を抱き返して、ゆっくりと床に押し倒した。こて
ん、と床に転がる彼女に被さると彼女は食事を邪魔されたからなのか、不満そうにこちらを見つめ返す。それでも、
止めてなんてやるものか。覆いかぶさるようにして、そのまま唇を合わせれば、苦い苦い鉄の味がする。自身の血
になど興味もないし、人間の俺にはその旨さなどきっと最後まで理解はできない。けれど彼女とキスできるなら、
口内に広がるそれはきっと酔うほどに甘いのだ。
『主の晩餐』
10/10/31
吸血鬼シックルとその餌。