今日は好きなだけ他人から菓子を巻き上げても良い日なのだと説明したら、珍しくぽかんとした表情で彼女が
首をかしげていた。
「その行為に何の意味がある?」
たかが菓子だろう、と純粋な気持ちで尋ねる彼女がなんだか普段の様子とは打って変わって、なんだかとても
素敵だ。こういういろんな表情をもっと見せてくれればいいのに。
「だって、大人だって菓子食べたいだろう?」
「…そうなの、か?」
シックルは菓子嫌いか?と何気なく尋ねてみると、彼女の表情が静止した。なにかを考え込むようにして、窓
の外に視線を泳がせる。その姿はなんだか歳相応の少女のようで、あどけなさがたまらない。ずっと見つめて
いたかったけれど、唸り声を上げて考え込む彼女の思考はだんだんと迷宮入りしていってしまいそうな様子だ。
「どうした?」
呼び掛けると、そこではた、と何かに気がついたようで、シックルの視線がようやく俺の方へと戻ってくる。
金の瞳と目が合うとなんだか途端に心臓が高鳴った。ああやっぱり可愛い
「甘い物、なんて、食べたことがない」
「……は」
思わず間抜けな声がでてしまった。しかしシックル自身もその答えに疑問が残っているようで、だって人間で
はないし、とかぶつぶつ呟いている。そりゃあそうだ。少し考えれば簡単に理解できる。そう、彼女はホムン
クルスなのだから。作られた人間。そんな普通の女の子のような生活を送ったことなんてあるわけがない。そ
んなふうに考えた時には、体が勝手に動いていた。がたん、と音を立てて椅子から立ち上がる。俺自身も驚く
急な行動だったから、目の前のシックルも目を見開いて俺を凝視している。
「おい、大丈夫か?」
いつになくシックルが心配そうに尋ねてくる。まあ表情はいつもと同じくむっつりしていたけれど。今はそれ
に見惚れている場合ではない。
「行くぞ」
「は?」
今度はシックルが間抜けな声を出す番だった。硬直する彼女の手をつかんで、歩き始める。
「は?貴様なんのつもりだ?」
俺に手首をつかまれた状態でシックルがあわてた声でそう尋ねた。本気で俺の言動を不思議がっている様子だ。
彼女はこう大事なところでどうしてこうも鈍感なのだろうか。そんな、好きな相手がお菓子を食べたことがな
いなんて言われて、黙って相槌を打つ男がどこにいるというのか。
「今からたくさんお菓子を食べに行くぞ」
初めてのお菓子をたくさん食べて、その甘さに驚いて。
それから
笑ってくれないか。
Happy Halloween!
10/10/31
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