「子供扱いしないでください」
唐突にそんなことをふくれっ面で言うものだから、すぐに言い訳が出てこなかった。その動揺を悟られない
ようにゆっくりと呼吸を整えれば、彼女はそれを溜息だと判断したらしい。ますます不貞腐れてしまった。
彼女はソファに座る私と向かい合うように、足の間にちょこんと上品に姿勢を正して座っている。それゆえ
必然的に下から私を上目づかいに見上げる形になるのだが、きっとそのことになどまったく気がついてはい
ないだろう。くりくりと大きな瞳がじっと私を見つめている。睨んでいるつもりなのだろうが、生憎それは
まったくと言っていいほど逆効果なのだ。

「た、確かに私はラックさんに比べれば、まだまだ子供です、けど」
「……」
「これでも一応、女なんですし、」

こんな時どんなことを言えばいいのだろう。思わず兄たちや幼馴染の顔が浮かんだが、まったく参考になり
そうもなかった。もう少し洒落たことが言えればいいのに、と自分の口下手が嫌になる。彼女には悪いが、
不要に口を開けばいらぬ発言をしてしまいそうで、迂闊に返答すらできないのだ。

「…考えておきます」

はぐらかすようにそう答えれば、やはり彼女は不満そうに口をとがらせた。そんな動作一つ一つに眩暈を覚
えてしまう私自身、もうどうかしている。

ああ、もう子供に見えなくなってしまったから大変なのだ。




     秘めやかに
                  11/09/20