【!】吸血鬼パロ。「眠れぬ夜に」と同設定。
光から逃れるように、カーテンの締め切った部屋の中で彼女はかすかな寝息を立てている。電気すらない真っ暗な
部屋の中はひどく冷たく、それはまるで罪人を閉じ込める寂しい監獄のようだった。部屋には用事のない時は入る
な、と日ごろから厳命されているけれど、どうもそんな約束はこれからもきっと守れそうにない。彼女を起こして
しまわないようにゆっくりと後ろ手で扉を閉めてから、彼女のベッドに近づく。その中心で小さく毛布に包まって
いるシックルの隣にそっと腰かければ、まどろみの中で彼女が微かに声を上げた。その扇情的な声は意識されたも
のではないと十分に理解していながら、つい欲情してしまう自分は本当に馬鹿らしい。だから、犬以下だと彼女に
言われてしまうのだろうか。好意を受け付けない彼女の姿がとてもとても可愛らしいものだから、俺はそのことを
いつも忘れてしまうのだ。
「…なあ、」
吸血鬼に恋をする人間の話など、ありふれた創作物だと笑っていたはずなのに、まさか自分がその愚かな人間にな
ってしまうなんて少し前までは思ってもいなかった。一緒に居られるなら餌でもいい、と思ってしまう日が来るな
んて、彼女に会うまで考えもしていなかった。
「はやく、起きてくれ」
さらさらとした彼女の髪を軽く梳く。そうする度に彼女の目元が少しだけ震えて、それだけでどうしようもない熱
情が俺の思考を支配していく。彼女の細い腕が、肩が、伏せられた睫毛が、俺を確実に浸食していく。ああ、はや
く。はやく日よ沈んでくれ。憎いお前さえいなくなれば、そこはもう彼女の世界なのだ。
夜はもうすぐ、
11/10/31
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