赤き血潮 白雪姫の場合
 
 


月夜が差しこむ大広間に、美しい雪が舞い降りる。
さらりと長い白髪に、すきとおりそうなほどの白い肌。
その姿はまさに彼女の名にふさわしく、童話に登場する白雪姫そのものだった。
真っ白なドレスを翻しては、嬉しそうにその雪は、大広間の赤い絨毯を歩いていく。

「ふふ、」

彼女は前方に揺らめく赤い血だまりを見つけて、思わず顔をほころばせる。
わずかに頬を紅潮させたその表情は、あまりにも扇情的で甘美な香りを纏っていた。

そんな頬笑みを向けられた赤い血だまりは、ぬるりとその形状を変えて、人の形を象った。
スライム状のようなその液体の前で、彼女は立ち止まり、愛おしそうにその恋人の名を呼んだ。

「ごきげんよう、ゲルハルト」
【ああ、ドロシー。君に会えて嬉しいよ】

ふわりと血が空中を舞い、そう言葉を紡ぎだした。
その様子は傍から見ればそれはそれは不気味な光景なのだけれど、
そんなことには全く気を止めず、ドロシーはくすりとほほ笑んだ。


「ハッピーバレンタイン」
小さくそう囁いてから、ドロシーは少しだけ背伸びをして、その赤い液体に唇をつけた。
ドロシーが愛するこの吸血鬼には顔がないから、はっきりと場所を確認することはできないけれど、おそらく唇の位置に。



「愛しているわ」

ええそれはもう凍らせてあげたいくらい、に。





 → HAPPY VALENTINE!