そいつは腹が立つほどに弱くて脆くて、臆病でうざったくて、愚図で頭の回転が遅くて、そのくせ要らない時にだけ
変に勘が良くて、いつだって自分から進んで墓穴を掘っているような、そういう、ひどく頭の悪い奴で、
それなのに、なぜだかもう一人の俺はそいつのことをいたく気に入っていて、いつもいつもそいつの話ばかりを
俺に聞かせてくる。

今日はフレイキーがクッキーをくれたんだ、なんて能天気に笑いながら、
俺が見たこともないような幸せそうな顔で囁く自分の姿は、醜く血で汚れた姿よりずっと異質的で
嘔吐するほどに気味が悪い。何が一体、こいつをこんなにも腑抜けにさせてしまったのだろう。
俺自身が知るその女の姿はすべて泣き顔で、無様に俺に殺し潰される姿以外印象にも残っていない。
泣き虫で、いつも誰よりも早く俺の姿を見つけてしまう。
気がつかなければ、俺だって殺しはしないかもしれないのに、俺と僕の違いに、いつも最初に気がついてしまう。
俺の夢のなかで会うあいつは何時だって笑っているのに、
確かに俺に笑いかけているはずなのに、俺自身がそれを見ることはきっと何度死んでも、叶いはしない。








忘れてしまえばいいものを
12/08/07