さあみなさん、蒸し暑くてまったくもって不愉快な今日このごろ、いかがお過ごしですかな。善良な学生ならば仲良くア
ンビシャスしている時間なのだけれども、僕らはまたいつものようにというかなんというか、やっぱりのんびりとマンシ
ョンでお互いの愛を育んでいる。まあでも、ずっとマユが僕の腰をつかんでいるせいで、暑さは外とあまり変わらないん
だけど。



「ねー、みーくんみーくん。みーくんは、何色がすきー」
「まーちゃん色」
「うふふふお目が高いですな〜」


だらだらと首筋を伝う嘘をつかない汗にげんなりしている僕とは対照的に、隣のお姫様はいつも以上に超ご機嫌である。
マユは昨日、どういう感情の変化かはわからないがスーパーでの買い物の途中で、子供用の小さな積み木を買い物カゴに
突っ込んだ。そうして家に帰るなり「積み木なのだ!」と宣言し、それから夜通しでお楽しみ中だ。昼間ずっと寝ている
という自堕落な生活のおかげで、マユの目はいつになくギンギーンである。そしてもちろんその積み木遊びには、みーく
ん(仮)(暫定)=僕も付き合わされている。積み木は子供用なだけあって無駄に色がカラフルで、マユはそれを積み上げて
は崩し、積み上げては崩し、を繰り返している。いい仕事してます?


「みーくんとまーちゃんがいればねー、どんなことだってできるのだー」
「そうだねえ」
「無敵なのだ」


マユはただにこにこと笑って、積み木を重ねていく。ときどき僕のほうを振り返っては、幸せそうに「むはー」とか言っ
て可愛らしく笑うのが、なんだか変に印象に残った。マユがそこに何を見ているのか、僕に分かる時が来るのだろうか。
「(…それにしても、)」
積み木、ねえ。どうしてこんな代物に、急にまーちゃんは興味を示したのかね。それは、どんなに頑張っても絶対に残る
ことがないものなのに。重ねては、崩して、崩して、崩して。それから?
夢を築きあげても、それを待ち受けているのは破壊だけなのだ。
だって、まーちゃんの積み木は最初からすべて歪んでるのだ。歪んだ積み木の上にまた歪んだ積み木を重ねても、それは
同じことの繰り返した。だんだんと斜めに、歪んで傾いていくだけ。最初から、やり直さなければ、崩れかけたそれをも
とに戻すことなんてできないのに。


「ねえみーくん」 マユがふりむく。 「なんだい」 僕はこたえる。 「たのしい?」 まーちゃんは笑った。


ほほえんだ。満面の笑み。にっこりと。うれしそうに。たのしそうに。しあわせそうに。
まーちゃんのその表情が、なによりも、なによりも。



「とってもたのしいよ」





うそだけど、
うそだけど、



嘘だけど、 11/09/17