気紛れでその骨ばった首もとに腕をからめると、あからさまな嫌悪と共に黒い瞳が振り返った。真夏に
は相応しくない密着により、べとりと不快な感触がもれなく彼と私の両方に与えられる。すぐに振り払
われるものかと思っていたのだけれど、肝心の彼はますます顔を歪めるだけで行動はおろか、あのいつ
もの軽快なおしゃべりさえも囀らない。あらまあ。


「貴方、ついに言語機能すらおシャカになってしまったのね」
「……失敬。予想だにしない吐き気でちょっと脳みそが宇宙旅行に」
「あらあらあっきゅんったら。来世は白と黒の熊にお気をつけてね」


むう、この体勢見た目よりも疲れるのね。初心者ゆえ作法までは知らないのよ。首にまわした腕はその
ままで前方に体重を任せる。後ろから彼を抱きこむ形になって、じっとりと湿ったシャツに頬を寄せて
笑うと、ぞわりと鳥肌が立つのがわかった。もちろん、彼も私も。嫌だわ、こんなのマユ子さんに見ら
れたら、ワタクシってばもしかして惨殺されちゃうのかしら。コレの上で往生は御免ねえ…。最も、き
っとマユ子さんは私を殺すより先にこっちを殺すんでしょうけれど。だってみーくんですもの。私の一
瞬の気の迷いで死まで覚悟しないといけないなんて、ああまったくもっていい気味「重い」…………………ほほう。


「ひどいわあっきゅん女性に対してそんなこというなんて」
「まあ女性になら言わないけれど」
「………」
「ていうかさっきから君の絶壁が当たってるんだけどどどどどどど、、ちょ、湯女さ、首、絞まっ」
「死人に口なし、って良い言葉よねー」


コレに対してそういう感情を抱けるマユ子さんって幸せね。ええそりゃあもう、本当に。




深追いは禁止なのよ。 11/10/07