首筋に突然激痛が走った。それと同時にぬめりとした唇の感覚。噛みまみたどころではない。
マユが左下から顔を伸ばして、僕の首筋に歯を立てていた。
細い頸動脈にマユの小さな犬歯が突き刺さり、一瞬だが本気で死を覚悟した。
マユサマオマエマルカジリ。まったく、ワイルドに吠えすぎだぜまーたん。
しかし、当のまーちゃんは数秒僕に噛みついたままの状態で固まり、それから笑顔で唇を離した。同時にすぐさま
腕を僕の後頭部へ回して、首をへし折らんとする勢いでぎゅうぎゅうと絞めつけてくる。容赦のないコンボである。

「みーくんだーいすきー」

完全に僕の呼吸がふさがれていることになど見向きもせず、マユが幸せそうにそう笑った。
手加減のまったくない肉食系女子のおかげで、僕の首筋からはまるで殺人事件みたいにだらだらと血が流れているけれど、
そんなことはもう頭の隅から消えていた。
マユが楽しそうに今もなお生きている。それだけで、馬鹿な僕は、こんなにも報われてしまうのだ。



しあわせ 12/06/20