「好きですよ、先生」
「…あらあら、」
恋日先生が読んでいた漫画雑誌から少しだけ顔をあげて、僕の突然の行動を笑った。
先生は笑うと目の端が少しだけ細くなって、瞳が柔らかく光る。
この人と一緒にいる時間はひどくゆったりとして、それでいて一線を越えることの決してない、無味無臭の空気で出来ている。
目で認識することはできないのに、それでも確かにそれはそこにあるのだ。
自覚なしにだんだんと枯死していく僕の心は
放っておくと自分でも予期できない行動に討って出るから、それを予防するにはこれが一番いい。
じわじわと先生の言葉が僕に蓄積して、僕の重みになっていく。
それでいい、そのまま、底にまで沈み込んでいけばいい。

「君お得意の、決め台詞を忘れてるわよ」
「…いいえ、」

口癖の出番はしばらく必要ない。
先生はニー日先生だからきっと今日の日付もわかっていないのだろうけど、今回はそれも有難い。
こんなこと、そうでなければ言えるわけもない。




今日はすべてが嘘になる日 12/04/01
ハッピーエイプリルフール